ご本山では1月9日から16日まで御正忌報恩講がお勤まりになります。この御正忌報恩講は、今からおよそ720年前の永仁2年(1294年)に、覚如上人が報恩講式を著し宗祖三十三回忌を勤められた事に始まります。ですから、御正忌報恩講の最後の法要満日中(16日10時)の御座に、御門主様自らこれを拝読されるのであります。
さて、その報恩講式は
「敬ひて大恩教主釈迦如来、極楽能化弥陀善逝、称讃浄土三部妙典、八万十二顕密聖教、観音勢至九品聖衆、念仏伝来の諸大師等、総じては仏眼所照微塵刹土の現不現前の一切の三宝にまうしてまうさく。 中略 一つには真宗興行の徳を讃じ、二つには本願相応の徳を嘆じ、三つには滅後利益の徳を述す。伏して乞ふ、三宝哀愍納受したまへ。」と、この講式の本文に入る前に、表白として、この度この講式では三つの徳をお述べになることをあきらかにされのであります。
「一つには真宗興行の徳を讃じ」とは、親鸞聖人の御一生を偲ばれ、他力真宗の興行は宗祖より始まったことをあきらかにされ「すべからく仏号を称して師恩を報ずべし。」と一段を締めくくられます。
「二つには本願相応の徳を嘆じ」とは、浄土真宗のみ教えは、疑うものも必ず信を執り、謗ずるものも情を翻す仏意(本願)にかなったの教えであることをあきらかにされ、「おのおの本願を持ち名号を唱へて、いよいよ二尊の悲懐に恊(かな)ひ、仏恩を戴き師徳を荷なひて、ことに一心の懇念を呈すべし。」と二段を締めくくられます。
「三つには滅後利益の徳を述す」とは、宗祖ご往生の後、その遺恩を尊び身命をかけて「境関千里の雲を凌ぎて」関東より毎年ご門徒達が参詣され、廟堂に跪(ひざまづ)いて涙をながされ、その思いを「遺骨を拝して腸を断つ。」と表現されています。そして「祖師聖人(親鸞)は直也人にましまさず、すなはちこれ権化の再誕なり。すでに弥陀如来の応現と称し、」と宗祖は阿弥陀如来の化身であられたことをしめされ、「おのおの他力に帰して仏号を唱へよ。」と三段を締めくくられます。
この報恩講式は、その式文格段の間に念仏和讃が唱えられ、それらが終わると御門主様は微音〔ちいさいこえ〕で、以下礼拝の御文を念仏中にお唱えになられます。
南無帰命頂礼尊重讃嘆祖師聖霊 磬一音
南無帰命頂礼大慈大悲釈迦善逝 磬一音
南無帰命頂礼極楽能化弥陀如来 磬一音
南無帰命頂礼六方証誠恒沙世界 磬一音
南無帰命頂礼三国伝灯諸大師等 磬一音
南無自他法界平等利益 磬二音
古よりの伝承を重んじるこの「報恩講式」は、浄土真宗の法要儀式の中でも、最も重厚で丁寧なご法要と言えるでしょう。
2014年12月24日